魯迅の世界性、現代性、政治性

魯迅は、現代中国文化を背負った代表者、とされています。だが実のところ、私にして、現在の中国で魯迅のような人には会ったことはありません。本当にあの時代に遡って魯迅に会ったとするなら、むしろ私たちは彼を嫌悪することになるはず。とてつもなく個性的な人ではなかったか、と思います。いわば、反代表的な代表者ということになるでしょう(…代表とはまさに政治の機能です)。そのような魯迅が現代中国を代表するとは、いったいどういうことなのでしょう。鍵になるのは、「現代」をどう語るのか、ということです。それは、何らかの「新しさ」に追いつくことではなく、決して古くなりえない課題そのものとなった。だからこそ、皮肉にも、魯迅の文学作品は、世界的な潮流から言えば、あからさまに「遅れている」とも批判されていました。合わせて魯迅から学びたいのは、彼の中では政治(現実の力)と文学(想像の力)とは決して切り離せないものであった、という事実です。今日、東アジア(日本)で生きる私たちの「生」と政治との関係を考える縁(よすが)ともなるでしょう。
(参考文献:『魯迅出門』インスクリプト 2014年)

日 時:2018年9月1日(土) 19:00~21:00/18:30 Open
場 所:素人の乱12号店|自由芸術大学
資料代:500円+投げ銭(ワンドリンクオーダー)
講 師:丸川哲史

丸川哲史
一九六三年生まれ。二〇〇七年一橋大学大学院言語社会研究科にて博士号(学術)取得。現在、明治大学政治経済学部教授、同大学大学院教養デザイン研究科兼任。専攻は東アジア文化論。
著書として『リージョナリズム』(岩波書店二〇〇三年)、『冷戦文化論』(双風舎二〇〇五年)、『思想課題としての現代中国』(平凡社二〇一三年)、『魯迅出門』(インスクリプト二〇一四年)、『阿Qの連帯は可能か?』(せりか書房二〇一五年)など。訳書として『ジャジャンクー「映画」「時代」「中国」を語る』(ジャジャンクー著、佐藤賢との共訳、以文社二〇〇九年)などがある。